生い立ち

このサバニは約50年程前に、沖縄本島北部の東シナ海を臨む古宇利島の漁師の注文によって生を受けた古い舟です。但し、古宇利島には船大工がいなかったため、造船された場所は不明です。

漁に使われなくなってしばらく、港に放置されたサバニを見るに見かねた方が持ち主の漁師に交渉して譲り受け、その後はご自宅の屋根の下で大切に保存されていました。

それからのおよそ15年にわたる静かな時間を経て、帆かけサバニとして第3の人生を送るべく、私たちのチームにやって来たサバニは綾風(あやかじ)と名付けられました。






オリジナルの状態では、波除けのタナ、波切りの船首、そしてスタビライザーが装着されていたたため、今よりも一回りも二周りも大きく感じましたが、それら全てを撤去してみると想像したよりも遥かに美しいプロフィールを持つ船体が現れました。

その後の、エンジンハーネスやシャフトドライブの撤去、腐食した部分の切り取りと補強、接ぎ部分の水漏れ防止等の数ヶ月にわたる大規模な再生作業の殆どを、大先輩でもあるサバニ帆漕チーム「順風」の皆さんにお世話になり、2009年5月23日に糸満の地において再び海に浮かぶ事となりました。綾風が海に帰るのは実に約25年振りの事でした。



特徴

大人の男8人でようやく持ち上げる事が出来る綾風は恐らく200〜250Kgほどの重量がありますが、自重と比例した安定性は、他のサバニでの帆漕の経験があるメンバーも驚く程高いものがあります。

又、オリジナルと同じ様に復元したカーラは極めて控えめなものですが、風に対する充分な上り性能が、船体の優れた形状によって実現されています。


新しくなったトゥムジラの裏(内)側には、オリジナルの古い木材を残してあります。

2010年の春に総重量の20%近い大幅なダイエット対策を施した結果、上り性能は軽減したものの、従来とは全く違って舵効きの良い素直なプロポーションとなりました。



帆(フー)

サバニレースの先輩チームのアドバイスや、情報交換を得て作成した2枚目のフーは、もちろん手作り。2010年度の座間味レースから活躍していますが、ようやく船体とのバランスがとれたフーを手に入れる事が出来たと実感しています。フーザン用の竹の太さも初代に比べて半分くらいにしています。


また、上から2番目のフーザンには、竹を約3分の1に割って割ったものを差し込む様にしています。これによって、適度なしなりを持たせて最上部のワタをより脹らませる事と、同時に竹の破損の際に取り替えやすくする事を実現しています。サバニ帆漕レースのルールでは、フーザンを袋状にして中に差し込む事は禁止されているため、帯状の布を複数取り付けてその中を通す様にしています。







カーラ

2010年前半の船体のダイエットに伴い、上りでの帆走時の横流れが顕著になってしまったためカーラを設置する事になりました。細長い角材を複数本縦に繋げて深さを出しています。
この作業でも先輩チーム「順風」さんに大変お世話になる事となりました。



船体カバーと船台

舟の艤装を始め、ありとあらゆる事でお世話になりっぱなしの糸満 海人工房・資料館を主催する上原謙さんにご紹介頂き、大変立派な船体カバーを手に入れる事が出来ました。


白いカバーに黒地で描かれた「あやかじ」の文字は、船体に記した船名と大きさもフォントも同じものです。


ちなみに上原謙さんからは、ミーカガンを始めとする糸満の海人文化を教わるなど、サバニを通じた大変貴重なお付き合いを頂戴しています。

また2代目の船台は、現在のホームポートがある宜野座村の地元の方のご厚意で使わせて頂いているものです。



半年も持たずに壊れてしまった初代の船台と比べて、タイヤの径も大きく非常に使いやすく、その結果、陸上での移動も大変楽になりました。


写真は綾風のホームポートの日常です。